「新たなデザインのお仏具をつくることもある」というお話
お仏具はその意匠について古くから継承された決まり事がたくさんあったりするイメージをお持ちかと思います。
もちろんその通りですが、近年は人々の生活様式の変化とともにご本堂の設計やそこで使うお仏具も選択の幅が広がってきました。
それをふまえ、今回はキン台についてご紹介させていただきます。
キンとは「鏧」という漢字で、お坊さんが読経中にカーンと鳴らしたりお仏壇でもチーンと打ち鳴らすお仏具です。
お仏壇ではお鈴(おりん)と呼ばれておりそれが一般的にはイメージしやすいと思います。
それを置くための台をキン台といいます。
キンにはその役割によっていろいろと種類があり、同様にキンに合わせてキン台にもいくつか種類があります。
その中に金襴生地が張られたキン台がございます。
そうこれこれ!
本来は床に置いて正座し打ち鳴らすのですが、現代では正座ではなく椅子に座って読経されるご本堂も多くなりました。
そうすると座高に合わせて諸具も高くする必要が生じました。
そこで下台という高さを増す台を活用するようになります。
なるべくお仏具よりも出しゃばらないように存在感を消して、なおかつご本堂にふさわしい品格も残した黒塗りの台が多用されています。
弊社のキン台用下台
さて前置きが長くなりましたが、ある時、あらたに下台をご希望のお寺様より
「台(下台)に台(キン台)を置くというスタイルは避けたい!」
というご要望がございました。
なるほど、そのお気持ちわからなくもないです。
そこで台と台が一体化する方向で検討することにしました。
すでにお使いのキン台の金襴を剥がし、黒く塗り、下台も同様に黒く塗り組み合わせる方法です。
「こんな方向でいかがでしょうか?」
「オッケー」
下台のデザインをどうするか?
いくつか候補を描いてみました。
結果②の方向で進めることになりましたが、これを木で作ってそのあとに漆を塗るというところまで考えるとなるべく分解できる構造にしなければなりません。(きれいに塗るために)
そこからは木地師さんと相談し、ビスを使わず組み立て式にすることができました。
塗師さんに「コレなんでんのん?」といわれながら塗ってもらい、一部アクセントに箔押師さんに金箔をはってもらい形にすることができました。
条件をクリアしながら2次元を形に
してくださる木地師さんに脱帽
金襴も頑張って剥がし、金襴輪も黒い生地で新たに巻き直しました。
こういう時にささっとそれなりの生地を用意できるのは法衣店と仏具店のハイブリッド店である弊店の強みの一つです。
お寺様でデザインするのが得意なかたがおられましたら、ご自坊のお仏具もデザインされて「こんなん作れない?」というご相談もアリです。
それが500年後とかに人々から〇〇寺型前卓とか呼ばれたり博物館に飾られる日が来るかもしれませんよ。