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阿育苑

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「本堂の蛍光灯を、そろそろLEDに替えた方がいいらしい」

そう聞いても、まだ点いている照明を急いで交換する必要があるのか、迷われるお寺もあると思います。

一般照明用の蛍光ランプは、水銀に関する国際的な規制を受け、日本でも2027年末までに製造・輸出入が終了します。ただし、現在使用している蛍光灯が2028年から突然使えなくなるわけではありません。市場に残っている製品の購入・使用も可能です。経済産業省も、今後の入手性を考え、LED照明への計画的な更新を呼びかけています。

では、本堂も今ある蛍光灯をそのままLEDに置き換えればよいのでしょうか。

実は、ここが一番考えていただきたいところです。

本堂の照明は、単に「暗いか、明るいか」だけでは決まりません。

御本尊をどう見せたいのか。内陣をどんな雰囲気にしたいのか。外陣では何をするのか。

LED化は、本堂の「光のあり方」を考え直すよい機会でもあります。

まず「内陣をどう見せたいか」を決める

照明器具を選ぶ前に、最初に考えたいことがあります。

内陣を明るく見せたいのか。それとも、少し暗さを残した荘厳な空間にしたいのか。

ここが決まらないまま照明器具だけを選ぶと、「以前より明るくなったけれど、何となく落ち着かない」ということが起こります。

すべてを均一に明るくする必要はありません。

あえて内陣全体の照度を抑えながら、御本尊や御絵像には適切に光を当てることで、外陣から自然にお姿が見えるようにする方法もあります。

反対に、内陣全体を明るくし、荘厳具や金箔の細部まで見えるようにしたい寺院もあります。

どちらが正解という話ではありません。

大切なのは、「この本堂をどう見せたいか」を先に決めることです。

御本尊が見えない本堂になっていないか

外陣の後ろから内陣を見てみてください。

御本尊や御絵像のお姿は、自然に目に入るでしょうか。

本堂全体は明るいのに、御本尊のお顔だけが暗く見えていることがあります。

天井照明だけで本堂全体を照らすと、梁や宮殿、吊物などによって光が遮られることもあるからです。

その場合は、内陣全部をさらに明るくするのではなく、御本尊や御絵像の見え方を考えて光を補う方法があります。

本堂照明では「部屋を明るくする」という考え方だけでなく、

参拝者の視線がどこへ向かうのか

も重要です。

オレンジ色と白色の光を同時に混ぜない

LEDでは、いわゆるオレンジ色に近い暖かい光から白い光まで、さまざまな色を選べます。

ここで注意したいのが、色の違う光を無計画に混在させることです。

例えば内陣の一方が暖色、隣が白色、その奥はまた暖色という状態になると、金箔や木部の見え方も場所によって変わり、空間として落ち着かなくなることがあります。

阿育苑では本堂照明を検討する際、3000K前後の暖かみのある光を一つの出発点として、金箔・木部・畳との相性を現地で確認しています。白すぎる光は場所によって事務所的に見えることもあるためです。

もちろん、暖色だけが正解という意味ではありません。

最近では、暖かい色と白い色を切り替えられる調色機能や、明るさを変えられる調光機能を備えた照明もあります。LEDには調光・調色によって利用シーンに合わせて光を変えられる製品があります。

ここでポイントになるのは、

違う色をバラバラに混ぜるのではなく、用途に応じて「光の場面」を切り替える

という考え方です。

内陣は暗く、外陣は明るくてもいい

「本堂の照明」と一括りに考える必要もありません。

例えば内陣は少し暗さを残し、御本尊が自然に浮かび上がるようにする。

一方、外陣は明るくする。

これは十分あり得る組み合わせです。

外陣では法要だけでなく、門信徒・檀信徒のお集まり、研修会、総代会、打ち合わせ、準備作業などが行われます。

そのとき、配布資料が読みにくかったり、細かな作業がしづらかったりする本堂では不便です。

普段のお参りでは照度を落とし、お集まりの際には外陣を明るくする。

最近の調光照明を使えば、そのような使い分けもしやすくなっています。

つまり、

「本堂全体を何ルクスにするか」ではなく、内陣と外陣それぞれに何を求めるか

を考える方が実際的です。

御経を読む場所だけ、きちんと照らす

もう一つ、意外と見落とされるのが読経する場所です。

内陣全体の雰囲気は暗めに保ちたい。

しかし、御経はきちんと読めなければ困ります。

その場合、内陣そのものを明るくするのではなく、読経する場所にスポットライトなどで必要な光を与える方法もあります。

これは外陣でも同じです。

本堂全体の雰囲気を変えなくても、「文字を読む場所」「作業する場所」「歩く場所」に必要な光を足すことはできます。

照明を、

  • 空間をつくる光
  • 御本尊を見せる光
  • 御経や資料を読む光
  • 安全に歩くための光

と分けて考えると、計画しやすくなります。

阿育苑で本堂を確認するときも、外陣で経本が読めるか、御本尊が自然に見えるか、金箔や金具が反射しすぎていないか、入口から焼香台までの導線や段差が見えるか、といった項目を分けて確認しています。

金箔は「明るくすれば美しく見える」とは限らない

寺院ならではの問題が、金箔や金具です。

光を強く当てると確かに輝きます。

しかし、照明の位置や角度によっては一部だけが強く反射し、かえって御本尊より金具の方が目立ってしまうことがあります。

逆に、少し光量を落とした方が陰影が生まれ、荘厳に奥行きを感じることもあります。

そのため照明は、カタログ上の色温度や明るさだけで決めるのではなく、可能であれば実際の内陣で点灯した状態を確認することをおすすめします。

古い蛍光灯器具は「管だけLED」では済まないこともある

LED化では器具そのものの状態にも注意が必要です。

照明器具は外観がきれいでも内部では劣化します。日本照明工業会では、一般的な使用条件で照明器具の適正交換時期を8~10年、耐用の限度を15年としています。

古い蛍光灯器具の場合は、単に蛍光管をLED管へ交換するのではなく、器具そのものを交換した方が安全な場合があります。

特に本堂では天井が高く、一度器具を交換するだけでも足場や高所作業が必要になることがあります。

だからこそ、

「今回何とか点けばよい」

ではなく、

次の10年、15年をどう維持管理するか

まで考えておく方が結果的には合理的です。

「普段」「法要」「集まり」で光を変えるという考え方

これからLED化するのであれば、一つの明るさだけに固定する必要もありません。

例えば、

普段のお参りでは、内陣を落ち着いた明るさにする。

法要では、御本尊と読経場所をしっかり照らす。

総代会や研修会では、外陣を明るくして資料を読みやすくする。

清掃や準備の際には、全体を明るくする。

調光・調色機能を利用すれば、こうした使い分けも可能です。

これは単なる便利機能ではありません。

一つの本堂を、荘厳の場としても、人が集まる場としても使いやすくする

という考え方です。

LEDに替える前に、一度「夜の本堂」を見てみる

蛍光灯の製造終了が近づいているからといって、最初に照明カタログを開く必要はありません。

まず、夜の本堂で照明を点けてみてください。

御本尊・御絵像は外陣から見えるか。

内陣は明るくしたいのか、暗さを残したいのか。

経本を読む場所は明るいか。

外陣で資料を読むことはできるか。

暖色と白色の照明が混在していないか。

まぶしい場所、暗い段差はないか。

そこが分かれば、何を交換すべきかも見えてきます。

本堂のLED化は、単なる蛍光灯の代替ではありません。

これからこの本堂を、どのような光の中で使っていきたいのか。

そこから考えることが、失敗しない照明計画の第一歩です。


本堂の照明についてもご相談ください

「内陣をもう少し明るくしたい」
「御本尊が外陣から見えにくい」
「読経するところだけ明るくしたい」
「外陣を集まりにも使いやすくしたい」
「LEDにしたいが、どの色・器具を選べばよいか分からない」

といった段階でも構いません。

阿育苑では、仏具・荘厳の見え方や本堂の使われ方も含めて、照明についてのご相談も承ります。まだ具体的な計画が決まっていない場合も、何でもご相談ください。

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