ペット供養に税金と条例
日本人は古来より、暮らしを囲む生き物への感謝や畏怖の念から、丁重な供養を行なってきた歴史があります。
鵜飼秀徳氏の著書『ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる』には、古くは飛鳥時代の犬塚をはじめ、鯨やウナギ、バッタにカエル、果てはしろありやゴキブリまで、日本各地の生き物供養の歴史が紹介されています。
日本では現在、全世帯数の2割にあたる家庭で犬や猫が飼育されており、その数はすでに、15歳未満の子供の数を上回るほど。室内飼いが増加していることとも関連して、ペット産業は2010年代以降急激に増加。ペットの供養も大きな伸びを見せています。
多くの人々が「うちの子」と呼んで可愛がるペットですから、亡くしたときの飼い主の悲しみは、人間の家族を失った悲しみに劣ることはありません。お寺にその供養を求める人々がいることも当然のことでしょう。
ペットの供養にあたって、寺院経営の観点から、注意が必要なことが大きく二つあります。
一つは税金。お寺が執り行う「ペットの葬祭業」について、民間企業との課税の公平性や競合性を理由に、法人税の対象となる収益事業であると判断した裁判事例(平成20年9月12日最高裁判決)があります。 「ペットのお墓」については、平成20年1月23日の東京高裁判決で固定資産税を課税しない旨の判決が出ています。ペット葬儀に関する判決と矛盾するような内容に見えますが、細かい論点は別記事で触れたいと思います。
二つ目に注意したいのが条例。 国法では、ペットのお墓について規制した法律はありませんが、令和5年3月現在、全国118の自治体でペット霊園を規制する条例が設けられています(一般財団法人 地方自治研究機構調べ)。 条例がある自治体では、無断で新たにペット墓を建立することや、条例制定前に建立されたペット墓も行政に届出をしなければ、条例違反に問われるおそれがあります。
現代人の暮らしにペットの存在が大きくなればなるほど、ペットの供養の求めも膨らんできます。
世間の実情も踏まえながら、ペット供養へのスタンスを考えてみてはいかがでしょうか。
株式会社366 代表取締役CEO 伊藤照男 ≫株式会社366≪