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阿育苑

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日本と同じ東アジアにあり、仏教や祖先祭祀の文化を持つ台湾。

その台湾では今、人が亡くなった後の遺骨の行き先が少しずつ変化しています。

興味深いのは、

「納骨堂が減って自然葬へ移行している」のではない

ことです。

実際には、納骨施設を整備しながら、同時に「遺骨を恒久的な個別区画に収蔵しない葬送」も増えています。

台湾政府の統計から見てみましょう。

※ここで扱うのは台湾の公的な葬送制度・統計であり、台湾仏教の教義や寺院だけに限定した話ではありません。

台湾には1,000万を超える遺骨を収蔵できる施設がある

台湾内政部によると、2024年末時点で骨灰・遺骨の収蔵施設は625か所。

最大収容能力は約1,008万位とされています。

つまり台湾では現在も、納骨塔、納骨堂、納骨壁などの「遺骨を収蔵する施設」が葬送インフラの大きな部分を占めています。

数字だけを見れば、

「台湾では納骨施設がしっかり整備されている」

と言えます。

ところが、同時に別の変化も進んでいます。

墓地へ埋葬する人は減少している

台湾では、従来型の墓地への埋葬割合は低下しています。

一方で増えているのが「環保自然葬」と呼ばれる葬送です。

樹葬、花葬、海洋散骨など、恒久的な墓碑や個別の納骨区画を設けない方法です。

2024年の環保自然葬利用件数は約3万件となり、2015年と比較すると大きく増加しています。

台湾の「環保自然葬」とは何か

台湾政府がいう環保自然葬には、

樹葬。
花葬。
指定緑地への埋蔵。
海洋散骨。

などがあります。

地域によっては利用料を無料にしたり、自然葬を選択した人に奨励制度を設けたりしている自治体もあります。

つまり台湾では、自然葬は単なる民間の新サービスではありません。

行政が葬送政策の一つとして選択肢を整備している

という点が特徴です。

「納骨塔から自然葬へ」ではない

ここが台湾の事例で最も興味深いところです。

納骨施設は存在する。
自然葬も増えている。
従来型の墓地埋葬は減っている。

つまり起きているのは、単純な世代交代ではありません。

葬送方法そのものが多様化している

と見る方が正確でしょう。

「墓に入る」
「納骨塔に納める」
「樹木の下へ還る」
「海へ還る」

という複数の選択肢が社会制度として並び始めています。

では、「供養する場所」はどうなるのか

ここからは台湾政府の統計ではなく、日本の寺院を考えるための問いです。

遺骨を納骨堂に永久に置かない人が増えたとき、

人はどこで故人を偲ぶのでしょうか。

日本では長く、

「遺骨がある場所」
「墓参りをする場所」
「法要をする場所」
「寺院」

が比較的近い関係にありました。

しかし遺骨そのものが自然へ還った場合、この関係は少し変わります。

遺骨がなくなっても、

亡くなった人を偲びたい。
命日には手を合わせたい。
家族で集まりたい。
僧侶にお経をお願いしたい。

という気持ちまでなくなるわけではありません。

そう考えると、これからの寺院にとって大切なのは、

「遺骨を保管する場所」であることと、「故人と向き合う場所」であることを分けて考えてみる

ことなのかもしれません。

日本の納骨堂を考えるときにも「収容数」だけでは足りない

寺院が納骨堂を新設・増設するとき、

「何体収蔵できるか」
「何年間使えるか」
「建築費はいくらか」

を検討するのは当然です。

しかし台湾の変化を見ると、もう一つ問いを加えてもよさそうです。

「30年後も、人は今と同じ方法で遺骨を残したいと思っているだろうか」

という問いです。

1,000万位を超える収蔵能力を持つ一方で、自然葬も増加している。

この二つが同時に存在していること自体が、日本の寺院にとって重要な示唆ではないでしょうか。

まとめ

台湾の葬送は、

墓地から納骨塔へ、そして自然葬へ

という単純な一本道ではありません。

現在も大規模な納骨インフラを持ちながら、樹葬、花葬、海葬など別の選択肢を社会全体で増やしています。

そこから日本のお寺が考えられることがあります。

これから寺院が守るべきものは、

「遺骨を置いておく場所」だけなのか。

それとも、

人が亡き人を思い、手を合わせ、関係を結び直すための場所なのか。

台湾の数字を眺めていると、納骨堂の将来だけでなく、寺院そのものの役割まで考えさせられます。

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